開け、金ゴマでミライ。(1/3)

 「農福連携」という言葉を知っていますか。
 農福連携とは、農業と福祉が連携し、障害のある方や高齢者が農業の分野で活躍することを通じ、社会参画の実現と農業の発展を促す取り組みのこと。雇用機会や収入の確保につながるとされ、近年、全国で取り組みが広がっています。
 西脇市では、平成29年から市内の就労継続支援事業所や日本のへそゴマ研究会などとともに、農福連携の取り組みを開始。金ゴマを育てることから始まり、昨年からは加工品作りにも挑戦しています。
 土作りから収穫、そして加工品作りまでに至る4年目の取り組みをリポートします。

写真:畑一面に実った金ゴマを収穫(小型無人機で撮影)

農業の担い手不足

 農業従事者の高齢化や後継者不足によって、全国的に農業の就業人口が減っています。それに伴って、農作物の栽培面積が小さくなり、耕作放棄地が増えています。
 農業は農作物の生育期間中に、作業量が少ない傾向にある一方で、は種期(種をまく時期)や収穫期は極端に作業量が多くなるなど、季節によって作業量が大きく変化します。また、農作物は天候や病害虫などの自然条件によって収穫量が変動し、価格が安定しません。さらに、傷みやすいものは、輸送から販売に至る流通過程で時間や範囲に制約があります。これらのことが要因となり、他の職種に比べて、人材の確保が難しいことが問題となっています。
 「農林業センサス」(農林水産省)などによると、全国の農業就業人口は令和元年が168万人余りで、昭和60年(542万人余り)から7割近く減少。農家の平均年齢は67.0歳(令和元年)と、高齢化が進んでおり、今後さらに労働力不足が深刻化すると考えられています=下表

新たな担い手に福祉の力

 このような中、福祉事業所が新たな農業の担い手として期待されています。この農福連携は、自治体や企業が農園の管理や農作業などの請負サービスを通じて、障害のある方や高齢者などに働く場を提供するものです。国や県は農福連携に対して補助金を出し、取り組みを後押ししています。
 農福連携は、障害のある方の雇用機会や収入の確保だけではなく、遊休農地と人手不足の解消にもつながるとされています。

全国の農福連携

 静岡県浜松市での先進的な取り組みを紹介します。いずれの取り組みもユニバーサル農業のモデルとされています。

①京丸園
 京丸園株式会社は、農作業の工程を細分化し、誰にでも仕事ができるようにする工夫をしています。障害の特性に合わせて農作業ができるように、農作業の機械も開発してきました。
 同園の取り組みは、農園で働く障害のある方の作業領域を拡大。一つ一つの農作業を見直すことになり、法人全体の作業効率や品質向上につながっているそうです。農業経営に好循環を生むとされる障害のある方の農業参画モデルとされています。

②CTCひなり
 IT企業の子会社のCTCひなり株式会社では、障害のある方が農家から請け負った農作業のほか、親会社向けに農作物や加工品の販売をしています。
 農家にとって販路確保につながり、親会社はコスト削減や生産者が分かる農産物を得ることができます。都市と地方を結ぶ障害のある方の農業参画モデルとされています。

金ゴマ栽培に挑戦

▲統計開始以来初となる8月の降水量がゼロに。大粒の汗を流しながら作業にいそしむ

 西脇市でも、農家や兵庫県加西農業改良普及センターなどの協力を得て、平成29年度に就労継続支援事業所とともに農福連携を開始。生産量が少なく、需要が見込める市の特産品・金ゴマに着目し、住吉町にある農地で金ゴマの栽培に取り組むこととしました。
 本市では、日本のへそゴマ研究会が土作りや種まき、収穫など、作業工程の一部を事業所に委託。事業所を利用する皆さんが、農家とともに栽培するものです。

援農の体制づくりも

 取り組むのは、黒田庄町喜多にある就労継続支援B型の「ドリームボール」。ドリームボールは約20人を受け入れており、障害のある方が働きながら技能を身に付け、一般就労を目指しています。
 農業にはさまざまな作業があることから、一人一人の適正に応じた仕事とマッチングさせることができるという利点があります。市では研究会や事業所とともに、農作業に対する利用者の向き・不向きを検証しており、将来的に事業所が農家から農作業の一部を請け負うこと(援農)ができる体制づくりも進めています。

左:花の甘い香りに誘われてハチが飛来
右:シカやイノシシも大敵。侵入防止に畑の周囲に電気柵を設置

農作業が楽しい

 屋外での作業が好きで、参加を決めました。農作業は楽しく、私たちが作った金ゴマで、クッキーができることは自慢になります。皆さんにおいしいクッキーを届けられるように、これからも頑張って、金ゴマ作りに取り組んでいきたいです。

(特定非営利活動法人スポーツアカデミーShine ドリームボール 利用者代表 藪本 光明さん)

経験は一般就労への道

 市の特産品に関わることができ、大変うれしく、誇りに思います。太陽の下で作業することは、利用者にとって精神的にプラス。地域の皆さんとともに取り組め、楽しい思い出になっています。このような就労経験を通して、利用者の一般就労への道が開けます。

(特定非営利活動法人スポーツアカデミーShine ドリームボール 代表理事 竹本 武志さん)


◆問合せ 農林振興課(0795-22-3111代表)